


千葉県印西市、印旛沼北西の田園地帯に位置する栄福寺(えいふくじ)。
建立年代が明らかな建築の中では、県内最古の薬師堂を詳しくご紹介します!
栄福寺はこんなところ
栄福寺は行基によって開基され、厨子とご本尊は印旛村鎌刈から勧請されたと伝わりますが、その沿革は明らかではありません。
しかし、薬師堂の棟札には「寛正七(1466)年六月柱立、応仁三(1469)年霜月上棟、文明四(1472)年二月成就」との墨書銘があり、少なくとも室町時代の中期にはこの地に伽藍を構えていたことがわかります。
(現地案内板・栄福寺薬師堂のホームページ・印西市ホームページより)

栄福寺が所在する印西市は千葉県の北西部に位置し、古くから利根川の水運が盛んなだけでなく、印旛沼や手賀沼など豊かな水源と緑に恵まれたエリアです。
栄福寺は角田という小さな集落にあり、現在は23軒の住民の方々が管理されています。ご本尊は33年に一度開帳される薬師如来であり、最近では2017年11月12日に開帳されました。
境内を散策する
今も残る神仏習合の名残

周辺は千葉ニュータウンとして開発の波が迫りますが、お寺の周辺はいまものどかな景観が広がっています。

境内の中心には大きな銀杏の木が立ち、その周囲に薬師堂と鐘楼、かつての鎮守社である熊野神社を配します。栄福寺は今も熊野神社と同じ境内に共存しており、かつて神仏習合の形態で篤く進行されていたことがを伺えます。

隣接する薬師堂と熊野神社ですが、それぞれに参道と手水舎が備え付けられているのがユニークでしょうか。

熊野神社は拝殿が本殿の覆屋を兼ねた造りとなっています。
茅葺屋根が美しい薬師堂

方三間とコンパクトな薬師堂ですが、高さのある茅葺屋根が伸びやかで軽快な印象を与えます。

棟札には「応仁三(1469)年霜月上棟、文明四(1472)年二月成就」と墨書銘があり、建立年代の明確な建築としては県内最古のものです。

堂内は外陣と内陣を区切る密教式仏堂の様式をあらわし、外陣は鏡天井に極彩色で天女を描き、内陣は来迎柱を立て、その前に極彩色で飾った須弥段を設けます。

お堂の前方には一間の向拝を附しますが、これは江戸時代中期に補加されたものです。

向拝の組物や虹梁、蟇股の彩色から江戸建築の意匠が見て取れるのではないでしょうか。

各面にあしらわれた長押が和様の意匠である一方で、正面三間の桟唐戸やその軸を受ける藁座は禅宗様の意匠であり、和様と禅宗様が混在した折衷様の建築であることがわかります。


両側面は前方から一間目を舞良戸、二間目を板戸、三間目を縦板壁、背面は中央間を引戸、その両脇間を縦板壁とします。
組物は出三斗、各面の柱間には中備えとして蓑束があしらわれています。
まとめ
茅葺屋根が美しい、建立年代が明らかな建築の中では県内最古の薬師堂を有する永福寺。境内には大きな銀杏の木があり、銀杏が色づく秋には見事な景観を楽しむことができそうです。
交通アクセスは比較的良好であり、最寄り駅の「印旛日本医大駅」からは徒歩20分ほどです。
印西市は文化財を多数有するエリアであり、周辺にはそれぞれ秘仏である七仏薬師と不動明王をご本尊とする松虫寺と結縁寺、栄福寺薬師堂と似た造りの宝珠院観音堂などが点在します。
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基本情報
- 正式名称
角龍山栄福寺 - 所在地
千葉県印西市角田2 - 宗派
天台宗 - 指定文化財
重要文化財(薬師堂) - アクセス
北総線「印旛日本医大駅」から徒歩約20分
(印旛日本医大駅にはスカイライナーを除くすべての列車が停車します) - 駐車場
境内前にあり/約10台/無料 - 入山時間
境内自由 - 御朱印
無し - 所要時間
約10分

参考
現地案内板
栄福寺薬師堂のホームページ 最終アクセス2025年12月13日
印西市のホームページ 最終アクセス2025年12月13日
