


京都府木津川市、鹿背山(かせやま)のふもとに位置する西念寺(さいねんじ)。
旧中川寺(なかのがわでら)伝来とされる薬師如来や美しい境内を詳しくご紹介します!
西念寺はこんなところ
西念寺は鹿背山寺の後継寺院であり、本記事では鹿背山寺の縁起をご紹介します。
享保五(1720)年に記された『鹿背山寺略縁起』によると、皇極天皇年間(642年~644年)に百済の僧がこの地に庵を結んだことに由来すると伝わります。奈良時代には行基によって伽藍が整えられ、薬師如来を本尊とする本格的な寺院となりました。また、創建当初は浄勝寺と号したようですが、このころに鹿背山寺と寺号を改めたようです。
中世は元興寺や西大寺(ともに奈良県奈良市)との関りが深く、南都念仏の興隆の一端を担いました。元応三(1321)年に堂塔を焼失し、その後天正十七(1589)年に現在地へ移転しました。
(お寺発行の栞、『賀世山ノ研究』より)

西念寺は木津川の南側、鹿背山の西麓に所在します。小さなお寺ではありますが綺麗に整えられた境内は美しく、旧中川寺伝来とされる薬師如来をはじめとする貴重な什宝を多数有します。
通常本堂と薬師堂の堂内拝観はできませんが、春と秋に実施される文化財特別公開期間中に限って拝観できることがあります。当該期間中に必ず拝観できるわけではありませんので、拝観をご希望の方は木津川市観光協会のホームページにて事前に公開の有無をご確認ください。
境内を散策する
境内は以下の通りです。

紅葉が彩る美しい境内

西念寺は鹿背山の集落の最奥に所在し、門前の道は国指定史跡に指定されている鹿背山城へ至ります。

素敵な佇まいの西念寺ですが、紅葉が彩りを添える秋にはより一層魅力的な様相を呈します。

境内の中央に東面して立ち、その北側に薬師堂と庫裏、東側に鐘楼を配します。
美しい境内も西念寺の見どころの一つですが、本記事では紅葉が見頃を迎えた11月下旬の境内の様子をいくつか掲載します。




旧中川寺伝来とされる薬師如来

本堂は宝永三(1706)年に建立され、ご本尊の阿弥陀如来をはじめとする多数の仏像と什宝が安置されています。
ご本尊の阿弥陀如来は台座天板に「延宝五(1677)年巳四月十五日 山城国井出ノ里 蓮臺寺 安称 寄進」と墨書きが残されています。この蓮臺寺とは橘氏の氏寺であった井出寺(京都府井手町)の跡地に建立された蓮臺寺(現在は廃寺)に該当すると想定されます。
また、ご本尊の背後にお祀りされる別の阿弥陀如来は面相部のみ平安時代の作ですが、穏やかで上品な相貌は見事な出来栄えです。

薬師堂は本堂の前年に建立されたものであり、薬師如来のほか日光・月光両菩薩と十二神将がお祀りされています。

- 薬師如来坐像
木造(檜)漆箔、一木造、像高50.7cm、平安後期、府指定文化財
『東大寺雑集録』によると本像は中川寺成身院から移坐されたとされ、中川寺は十二世紀後半に実範が中川(現在の奈良市中ノ川)に創建した寺院です。中川寺の故地は西念寺と距離的にもさほど離れておらず、その作風も実範の活動期のものと矛盾はありません。ただし、『雑集録』では古老の伝えるところとして、本像の足裏に「中川寺」の書付があるとしますが、観察の限りそのような銘記は確認されていません。
像高約50cmと小振りな像ですが、やや大きく造られた頭部と広い肩幅は大きさ以上に安定した印象を与えます。こうした十二世紀前半に見られる作風にくわえ、左足を外にした結跏趺坐や九重蓮華座の特徴は保延四年作の法隆寺釈迦如来像と共通することから、両像を奈良仏師の手になるとの見解があります。
(以上 『特別展 聖地南山城 展覧会図録』より)
- 日光菩薩・月光菩薩
木造彩色、一木造、像高46.3cm(日光菩薩)・45.6cm(月光菩薩)、室町時代、府登録文化財
薬師如来の両脇に安置された日光・月光両菩薩は小振りながらも精巧な造りであり、室町時代の基準作となる貴重な作例です。月光菩薩(向かって左側)には、台座底面に「奉寄進 右志趣者 為現世安穏後生善所也 永正十一甲戌(1514年)八月十日 英紹法印」との墨書きが残されています。
川端龍子旧蔵の毘沙門天

上記は日本画家川端龍子旧蔵の毘沙門天ですが、現在は東京国立博物館に所蔵されています。時折り本館第十一室に展示されていますので、ご覧になったという方もいらっしゃるかと思います。こちらの毘沙門天も中川寺伝来の仏像ですので、あわせてご紹介します。
- 毘沙門天立像
木造彩色・漆箔・截金・玉眼、寄木造、像高102.5cm、応保二(1162)年、重要文化財
像内から発見された毘沙門天像印仏からは応保二(1162)年に供養された旨の墨書を伴うものがあることから、像本体もこの前後の作と考えられています。また、印仏には元亀三(1572)年の年紀を伴う墨書も見出されており、その中の文言から中川寺十輪院に安置されていたことが明らかになりました。

本像は玉眼が嵌入されており、玉眼を嵌めた作例としては仁平元(1151)年の長岳寺(奈良県天理市)の阿弥陀三尊像や久寿二(1155)年の北向山不動院(京都市)の不動明王に次ぐ古例です。彩色や漆箔、截金がよく残るなど保存状態は極めて良好であり、とりわけ腹部から脚部にかけての截金文様は見事な出来映えです。
また、これは西念寺薬師如来にも共通する特徴ですが、各所に細かな材を挟んだり、通常はあまり行わない場所で材を矧ぐ(たとえば体部前・背面材ともに腰辺の位置で上下に矧ぐ)など独特の構造をあらわします。
(以上『毘沙門天 ー北方鎮護のカミー 展覧会図録』より)
まとめ
季節によって異なる表情を見せる美しい境内と旧中川伝来とされる薬師如来を有する西念寺。春と秋に実施される木津川市の文化財特別公開期間中を除いて本堂と薬師堂内の拝観はできませんので、仏像の拝観をご希望の方は木津川市観光協会のホームページにて公開の有無を事前にご確認のうえお詣りください。
最寄り駅である「木津駅」からは徒歩25分ほどと少し距離があるため、公共交通機関でお越しの場合はバスのご利用がおすすめです。近鉄京都線「高の原駅/山田川駅」、あるいはJR関西本線「木津駅」から奈良交通バス「鹿背山」行きで終点「鹿背山」下車、徒歩7分ほどです。
なお、お寺には駐車スペースが一台分しかありませんので、お車でお詣りの方はご注意ください。

基本情報
- 正式名称
鹿背山(かせやま)医王院西念寺 - 所在地
京都府木津川市鹿背山鹿曲田65 - 宗派
西山浄土宗 - 指定文化財
府指定文化財(木造薬師如来坐像)
府暫定登録文化財(本堂、薬師堂、木造日光・月光菩薩立像) - アクセス
- JR関西本線「木津駅」から徒歩約25分
- 近鉄京都線「高の原駅/山田川駅」、またはJR関西本線「木津駅」から、奈良交通バス「鹿背山」行きで終点「鹿背山」下車、徒歩約7分(バスはほぼ1時間に1本)
- 駐車場
境内前に駐車スペースあり/1台/無料 - 拝観時間
境内自由/堂内は春秋の特別公開期間中のみ拝観可能 - 拝観料
800円 - 御朱印
可/受付にて - 所要時間
約15分

参考
お寺発行の栞
田辺隆邦. 1983.『賀世山ノ研究』
奈良国立博物館. 2020.『毘沙門天 ー北方鎮護のカミー 展覧会図録』奈良国立博物館
奈良国立博物館. 2023.『特別展 聖地南山城 展覧会図録』奈良国立博物館
鹿背山西念寺ホームページ 最終アクセス2025年12月07日