【喜光寺(奈良県奈良市)】行基菩薩とハスの花

奈良県奈良市 喜光寺 本堂
奈良県奈良市 喜光寺 阿弥陀如来
奈良県奈良市 喜光寺 ハス

市内中心部から東方へ約5kmほど離れた「菅原(すがわら)の里」に佇む喜光寺(きこうじ)。

「試(こころみ)の大仏殿」と称される本堂やご本尊阿弥陀如来を詳しくご紹介します!

喜光寺はこんなところ

行基によって養老五(721)年に創建された当初は菅原寺と号したものの、聖武天皇が行幸された折にご本尊から不思議な光明が放たれました。そのことを喜んだ天皇より喜光寺という寺号を賜り、以降行基の布教活動・社会事業の拠点として重要な役割を果たします。

天平二十一(749)年に行基は89歳で生涯を終え、竹林寺(奈良県生駒市)に葬られました。その後しばらくは弟子たちがお寺を護持していたものの、寺勢は次第に衰退してしまいます。鎌倉時代になると叡尊によって再興され、興福寺一条院門跡の隠棲地に定められました。

明応八(1499)年の兵火で創建当初の本堂を、元亀年間(1570年~1573年)の兵火で再建された本堂を除く多くの堂塔を焼失し、江戸時代にも鎮守の喜光寺天満宮(現菅原天満宮)を失うなど災難が続きましたが、江戸時代中期に復興を果たします。

明治以降は廃仏毀釈によって再び苦難の時期を過ごしますが、平成の復興を経て現在に至ります。

叡尊:真言律宗を興し、西大寺を再興した鎌倉時代の僧。

奈良県奈良市 喜光寺

喜光寺を中心とした地域は古くから菅原の里と称され、『万葉集』でも「大き海の みなそこ深く 思いつつ 裳ひきならし 菅原の里」と詠まれた景勝地でした。筆者が子どものとき(2000年代)は本堂以外に主だったお堂がありませんでしたが、仁王門や行基堂が再建され寺観が整えられました。

また、近年はハスのお寺として有名であり、ハスが見頃を迎える6月~8月には近隣の西大寺・喜光寺・唐招提寺・薬師寺の四ヶ寺を巡る「奈良・西ノ京ロータスロード」が実施されています。詳しくは奈良市観光協会のサイトをご覧ください。

境内を散策する

80種もの蓮が彩る境内

奈良県奈良市 喜光寺 南大門

南大門は「いろは写経」勧進のご結縁により平成二十二(2010)年に再建されました。

お寺を守護する金剛力士像はブロンズ製であり、文化勲章を受賞された中村晋也氏による制作です。

奈良県奈良市 喜光寺 本堂

境内の中央に本堂が南面して立ち、その左手に佛舎利殿、後方に行基堂と弁天堂、庫裏を配します。

奈良県奈良市 喜光寺 佛舎利殿
佛舎利殿
奈良県奈良市 喜光寺 ハス

境内の蓮壺は250壺を数え、例年6月上旬から8月上旬にかけて約80種にも及ぶ蓮が色とりどりの花を咲かせます。

奈良県奈良市 喜光寺 弁天堂

本堂の裏手の弁天堂にお祀りされるご神体は宇賀神王といい、元日から1月15日とロータスロード開催期間のみ開扉されます。

『喜光寺縁起』によると、叡尊が江ノ島の弁財天を勧請されたと伝わります。

奈良県奈良市 喜光寺 行基堂

平成二十六(2014)年に建立された行基堂には行基像が安置され、その周囲には行基像を囲むように千躰地蔵がお祀りされています。

試の大仏殿と阿弥陀如来

奈良県奈良市 喜光寺 本堂
本堂(重要文化財)

東大寺大仏殿の建立に先立って、行基が喜光寺の本堂を建立したという伝承から「こころみの大仏殿」と称されています。当初の本堂は明応八(1499)年に焼失し、現本堂が天文十三(1544)年に再建されました。

奈良県奈良市 喜光寺 本堂

南側一間を吹き放す古風な様式をあらわしますが、これはなんという建築技法だそうです。奈良ではこういった古代由来の形式を踏襲した復古建築がよく見られますが、南庇という名称は初めて知りました。
喜光寺のホームページより)

奈良県奈良市 喜光寺 本堂

桁行五間・梁間四間、本瓦葺、寄棟造のお堂であり、正面三間を板戸、その両脇をれんまどとし、背面の中央一間を板戸、その他を塗壁とします。

奈良県奈良市 喜光寺 本堂

軒裏はだるえんだるがともに角形のふたのきしげたるとなっており、組物はぐみ、中備えとして間斗束があしらわれています。

奈良県奈良市 喜光寺 本堂
奈良県奈良市 喜光寺 本堂

外観からは二層構造のように見える本堂ですが、裳階もこしと呼ばれる装飾を廻した天井の高い単層となっています。

奈良県奈良市 喜光寺 本堂

上層の組物はだるさきとし、各面には連子窓を配して光を取り込む構造となっています。

奈良県奈良市 喜光寺 阿弥陀如来

堂内中央のしゅだん上に阿弥陀三尊がお祀りされ、すぐ近くから拝観することができます。

奈良県奈良市 喜光寺 阿弥陀如来
阿弥陀如来坐像(重要文化財)
  • 阿弥陀如来坐像
    木造(桧)彩色、寄木造、像高233cm、平安時代後期、重要文化財

現在は阿弥陀如来がご本尊としてお祀りされていますが、創建当初のご本尊は諸説あり明らかになっていません。穏やかな相貌や薄く刻まれた滑らかな衣文は定朝様の特徴をよくあらわします。

光背に注目すると、中心部と先端部分で風合いが異なっていることに気が付きます。長い歴史の中で一部を除きその大部分が失われてしまった光背ですが、令和の修理で失われた部分が補われ、かつての威容を取り戻しました。

奈良県奈良市 喜光寺 阿弥陀如来

切れ長の目とやや角ばった輪郭が印象的な大変端正なお顔立ちです。

奈良県奈良市 喜光寺 勢至菩薩
勢至菩薩
奈良県奈良市 喜光寺 観世音菩薩
観世音菩薩
  • 勢至菩薩坐像
    木造彩色、寄木造、像高162cm、南北朝時代
  • 観世音菩薩坐像
    木造彩色、寄木造、像高164cm、南北朝時代

両脇侍はおおらかな様相をあらわし、を組み片足の先を見せるのが特徴的です。南北朝時代の造立ということですが、現本堂の再建と同時期に制作されたのでしょうか。

まとめ

試の大仏殿や端正なお顔立ちのご本尊といった文化財だけではなく、境内を彩るハスが魅力的な喜光寺。「奈良・西ノ京ロータスロード」の実施期間中はお得な四ヶ寺共通拝観をお求めいただけるほか、各寺で特別御朱印がいただけ、秘仏の宇賀神王も開扉されますので、この時季にお詣りされることをおすすめします。

最寄り駅の「尼ヶ辻」からは徒歩12分ほどです。バスをご利用の場合は、「近鉄奈良駅/JR奈良駅」と「大和西大寺駅」を結ぶバスに乗車のうえ「菅原東」下車、徒歩5分ほど、または「学園前駅/菖蒲池駅」から36系統「学園前」行きで「阪奈菅原」下車、徒歩すぐです。

奈良県奈良市 喜光寺

基本情報

  • 正式名称
    清涼山喜光寺
  • 所在地
    奈良県奈良市菅原町508
  • 宗派
    法相宗
  • 指定文化財
    重要文化財(本堂、木造阿弥陀如来坐像)
  • アクセス
    1. 近鉄橿原線「尼ヶ辻駅」から800m/徒歩約12分
    2. 近鉄奈良線「大和西大寺駅」から1.3km/徒歩約18分
    3. 近鉄奈良線「近鉄奈良駅」・JR関西本線「JR奈良駅」から奈良交通バス163系統「大和西大寺駅南口」行きで「菅原東」下車、徒歩約5分
    4. 「大和西大寺駅」から奈良交通バス163系統「高畑町」行きで「菅原東」下車、徒歩約5分
    5. 近鉄奈良線「学園前駅」・「菖蒲池駅」から36系統菖蒲池行きで「阪奈菅原」下車、徒歩すぐ
  • 駐車場
    門前にあり/15台/無料
  • 拝観時間
    時期時間
    通常9:00~16:00

    7月中の土日祝日
    (詳細はお寺へお問い合わせください)

    7:00~16:00

    ※最終受付15:45

  • 拝観料
    区分料金
    高校生以上500円
    小中学生300円

    ※団体(30名以上の場合は一割引)、奈良市老春手帳<ななまるカード>を受付で提示の場合は300円(ただし秘仏宇賀神像開帳期間中は500円)

  • 御朱印
    可/受付にて
  • 所要時間
    約15分
奈良県奈良市 喜光寺 駐車場
駐車場

参考
お寺発行の栞
喜光寺のホームページ 最終アクセス2025年8月3日