



香川県高松市、瀬戸内海を望む高松城。
二基の三重櫓や巨大な天守台を有する国内有数の海城を詳しくご紹介します!
高松城はこんなところ
生駒親正は羽柴秀吉から讃岐国を与えられ、天正十五(1587)年に引田城(香川県東かがわ市)へ入城します。翌年には香東郡野原庄から高松へ地名を改めて高松城の築城を開始し、天正十八(1590)年に完成させました。その後、四代高俊のときに勃発した生駒騒動によって生駒氏は改易され、常陸下館より松平頼重が入って以降は松平氏が十一代続き幕末を迎えました。
高松城は本丸を中心に二の丸、三の丸、北の丸、東の丸、桜の馬場を時計回りに配した輪郭式平城であり、かつて城の北面は瀬戸内海に面していました。市街地でありながら本丸・二の丸・三の丸・北の丸・桜の馬場といった城の主要部がよく残り、二基の三重櫓や天守台が往時の面影を伝えます。
縄張り図は以下の通りです(破線部は消滅)。

高松城は玉藻城とも称し、「玉藻」とは柿本人麻呂が讃岐の国の枕詞として「玉藻よし」と詠んだことに由来します。現在は玉藻公園として整備されており、市民の憩いの場となっています。
見どころ
水堀と石垣が織りなす美しい景観
満々と水を湛えた水堀と石垣、松の木が調和した景観は高松城の見どころの一つです。


深い翠色に染まる夕暮れどきの堀はとりわけ美しく、筆者お気に入りの構図です。



堀には海水が引き込まれており、タイやチヌといった海水魚が泳ぎます。


太鼓門と水手御門
城の正面口にあたる大手門は太鼓門(現在の東入口)ですが、瀬戸内海に面した水手御門も“もう一つの大手門”でした。


太鼓門は寄せ手に対して多方向からの攻撃を可能とする桝形虎口となっており、枡形の正面に立つ旭門とかつて桝形を左に曲がったところに存在した太鼓門(櫓門)によって構成されています。

桝形虎口は各地のお城で見られますが、高松城のように桝形の内部に埋門が設けられている例は極めて珍しいといえるでしょう。

また、丁寧に切り揃えた石材を隙間なく積み重ねた「切込接」の石垣も注目ポイントです。



水手御門は月見櫓・渡櫓とともに海手側の玄関口を担い、藩主が船を使う際はここから小舟で海へ出て、沖で大きな舟に乗り換えたといいます。
優美な月見櫓と実戦的な艮櫓
高松城は月見櫓と艮櫓という二基の三重櫓を有しますが、現存する三重櫓は全国でも十二基しかなく、実は現存天守よりも数が少ないのです。

月見櫓は各層に配された長押が特徴であり、海の玄関口にふさわしい存在感を放ちます。ちなみに「月見」とは、藩主の帰着をこの櫓から眺め見ること(着見)に由来するそうです。

櫓の内側は簡略化されることも珍しくありませんが(城外からは見えないため)、月見櫓は内側にも破風や窓があしらわれ、左右対称の構造となっています。


毎週日曜日の9:00~15:00には内部が公開されていますので、骨組みを見学したり、上層から眺望を楽しむことができます。

現在は太鼓門に位置する艮櫓ですが、元々は東の丸の北東隅に立っていました。

三方に設けられた巨大な石落としが印象的であり、鉄砲狭間が隙間なく配されるなど実戦を強く意識した造りとなっています。

こちらが艮櫓がかつて立っていた東の丸の艮櫓台です。

東の丸の大部分はレクザムホールと香川県立ミュージアムになっていますが、艮櫓台や石垣の一部が残されています。一人のお城好きとして、石垣を取り壊すことなくこのような形で残してくれているのはとても嬉しいです。
77年ぶりに復元された桜御門
高松空襲によって惜しくも焼失した桜御門ですが、発掘調査の開始から完成まで12年をかけて2022年6月に竣工しました。


筆者は高松城に何度も訪れていますが、桜御門の復元によってより魅力的なお城になったように思います。

海城の縄張りを堪能する
海城ならではの特徴を要所に見ることができ、桜御門の復元に留まらず天守閣の再建計画も進められるなど、今後も大変楽しみな高松城。タイのエサやり体験や城舟体験も楽しむことができ、桜が満開を迎える時季にはライトアップイベントも開催されるなど、お城に関心のない方やごお子様連れのご家族でも楽しめるスポットです。
鉄道を利用のうえ、高松駅方面からお越しの方は通常西入口から入園されるかと思いますが、東入口から入園されると城の縄張りをより楽しむことができますのでおすすめです!

艮櫓や桜御門について詳しく紹介している下記の記事もぜひご覧ください。
本記事では高松城の艮うしとら櫓やぐらと桜御門、桜の馬場、三の丸について詳しくご紹介します!基本情報や見どころをまとめた前回の記事はこちら。[sitecard subtitle=前回の記事 url=https://[…]
基本情報
- 別名
玉藻城 - 所在地
香川県高松市玉藻町2−1 - 指定文化財
国指定史跡
重要文化財(月見櫓、水手御門、渡櫓、艮櫓、披雲閣) - 鉄道アクセス
JR予讃線・高徳線「JR高松駅」・高松琴平電気鉄道「高松築港駅」から徒歩すぐ - 駐車場
公園東入口前にあり/57台/無料 - 入園時間
西門開門時間 東門開門時間 4月~5月 5:30~18:30 7:00~18:00 6月~8月 5:30~19:00 9月 5:30~18:30 10月 6:00~17:30 8:30~17:00 11月 6:30~17:00 12月~1月 7:00~17:00 2月 7:00~17:30 3月 6:30~18:00 - 入園料
普通 団体(20人以上) 大人(16歳以上) 200円 140円 小人(6歳~15歳) 100円 70円 - 櫓の公開時間など
公開・体験 時間 備考 月見櫓の内部公開
水手御門の開門日曜日 9:00~15:00 桜御門の内部公開 土日祝日 9:00~16:00 城舟体験 3月1日~11月30日
9:00~15:30の30分おきに運行
(12:00~13:00を除く)大人(高校生以上)500円
小人(5歳以上)300円 - 日本100名城スタンプ設置場所
西・東入口料金所(押印可能時間は各門の開門時間と同じ) - 御城印販売場所
西・東入口料金所/披雲閣内管理事務所窓口(購入可能時間は各門の開門時間と同じ) - 所要時間
約45分/じっくり見学する場合は約90分 - トイレ
二の丸・三の丸・桜の馬場にあり - 関連遺構
報時鐘
参考
パンフレット
高松城【玉藻公園】公式ウェブサイト 最終アクセス2025年4月29日
高松市公式ホームページ 最終アクセス2025年4月29日