

千葉県印西市、手賀沼南方の田園地帯に位置する宝珠院(ほうじゅいん)。
堂内に残された美しい彩色から“光堂”とも称される観音堂を詳しくご紹介します!
宝珠院はこんなところ
市内北東部の田園地帯に位置し、貞観年間(859~877年)の開基と伝わる宝珠院。無住の期間が長かったようであり、唯一現存する観音堂は同じ集落に所在する泉倉寺によって管理されています。
ご本尊の聖観音菩薩は秘仏であり、33年に一度開帳されます。

境内を散策する
茅葺屋根が美しい光堂

木立の中にひっそりと佇む、素木の質感が美しい観音堂を暖かな木漏れ日が照らします。
余計な装飾のない方三間のコンパクトなお堂ですが、そのことがより一層清楚さを際立たせているように感じました。

観音堂の正確な建立年代は不明ですが、昭和期の解体修理の折に厨子内から永禄六(1563)年の墨書銘が発見されており、お堂もほぼ同時期の建立と推定されます。

茅葺屋根は令和四年~五年にかけて葺き替えられたため美しく、頂点には棟木と竹を戴きます。

正面は三間ともに桟唐戸、両側面は前方から一間目を引き戸、二間目と三間目を縦板壁とします。組物と中備えに出三斗を規則正しく配することで、軒下は引き締まった印象です。

千葉県内では和様と禅宗様が混在した折衷様の建築はよく見られ、観音堂もそうした折衷様建築の一例です。正面から見ると禅宗様の意匠である桟唐戸とその軸を受ける大きな藁座が目を引きます。

堂内は前方一間が外陣、後方二間が内陣であり、須弥壇や厨子、天井、組物の一部には美しい色彩が施されており、このことが由来となって「光堂」と呼称されています(参考:伝匠舎ホームページ)。
栄福寺薬師堂との比較
観音堂はその構造上の特徴から同市内の栄福寺薬師堂とたびたび比較されます。ここでは両者を簡単に比較してみます。


彩色や向拝を除くと、その外観は大変似通っていることがお分かりいただけるかと思います。


細部に着目すると、それぞれの柱間の構成に加え、中備え(観音堂は出三斗、薬師堂は蓑束)の意匠や正面の長押の有無(観音堂は無い)といった違いがあり、また軒の出は薬師堂の方がやや広いように感じられます。
まとめ
茅葺屋根と素木の質感が調和した佇まいが美しい宝珠院観音堂。記事内でもご紹介したように、その構造が類似した栄福寺薬師堂もお詣りして両者の違いを比較してみてはいかがでしょうか。
公共交通機関をご利用の場合は、「千葉ニュータウン中央駅」から京成バス「北口循環線」・「鹿黒循環線」のいずれかで「ビジネスモール北」下車、徒歩20分ほどです。あるいはバスの本数は限られるものの、「千葉ニュータウン駅」と「木下駅」を結ぶふれあいバスを利用することもできます。
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基本情報
- 正式名称
宝珠院(山号不明) - 所在地
千葉県印西市小倉1138 - 宗派
天台宗 - 指定文化財
重要文化財(観音堂) - アクセス
- 北総線「千葉ニュータウン中央駅」から京成バス千葉「北口循環線」・「鹿黒循環線」のいずれかで「ビジネスモール北」下車、徒歩約20分
(千葉ニュータウン中央駅にはスカイライナーを除くすべての列車が停車します) - 「千葉ニュータウン中央駅」からふれあいバス「西ルート(小倉・木刈・永治回り)」で「小倉」下車、徒歩約3分
- JR成田線「木下駅」からふれあいバス「西ルート(永治・木刈・小倉回り)」で「小倉」下車、徒歩約3分
- 北総線「千葉ニュータウン中央駅」から京成バス千葉「北口循環線」・「鹿黒循環線」のいずれかで「ビジネスモール北」下車、徒歩約20分
- 駐車場
泉倉寺の境内前に有り/約5台/無料 - 入山時間
境内自由 - 御朱印
無し - 所要時間
約10分
参考
現地案内板
伝匠舎ホームページ 最終アクセス2025年12月22日
印西市のホームページ 最終アクセス2025年12月22日
