岐阜県大垣市、静かな住宅地に位置する慈応寺。
本堂には可愛らしいご本尊と霊威を発する薬師如来がお祀りされております。
慈応寺はこんなところ
寺伝によると、平安時代に慈覚大師円仁が自らご本尊の聖観世音菩薩を彫刻し、創建したと伝わります。天正年間(1573年~1592年)には兵火によって諸堂を焼失しますが、ご本尊の霊威を感じた寒松寺の住職堯雅法印によって元禄八(1695)年に再興され、以降遮那院(大垣中町)の末寺となりました。
明治の神仏分離令によって明治三(1870)年には遮那院と大垣八幡神社の神宮寺(光明寺)が廃寺となり、両寺院の仏像仏具が慈応寺に移されました。
(お寺発行の栞より)
慈応寺は大垣駅の西方約5kmの静かな住宅地に位置し、よく整備された小さな境内には本堂と庫裏が立ちます。
ご本尊の聖観音菩薩や薬師如来は普段は非公開ですが、薬師如来が先日県指定文化財に指定されたことを記念して、2024年5月18日に一般公開が実施されました。当日は東海学園大学の教授である小野佳代氏(小野氏のXアカウント)による解説もあり、非常に興味深く拝観することができました。
次回は6月8日(土)に公開が予定されていますので、ご興味がある方はぜひこの機会にお詣りしてみてください。
境内を散策する
可愛らしいご本尊と霊威を発する薬師如来
慈応寺は東海道の宮宿と中山道の垂井宿とを結んだかつての美濃路に面し、小さいながら立派な表門が目印です。
こじんまりとした境内はよく整備されており、明るく開放感があります。
本堂の内陣には様々な仏像が安置されていますが、その多くは廃寺となった遮那院と光明院から移されたものです。
ご本尊は十一世紀に造立されたと推定される聖観音菩薩であり、近いうちに詳しい調査が実施されるそうです。普段厨子の扉は閉じられているようですが、この日は特別に開扉されておりそのお姿を拝することができました。
- 薬師如来坐像
木造(榧)古色、一木造、像高86.8cm、平安時代初期、県指定文化財
薬師如来は大垣八幡神社の神宮寺であった光明院の旧本尊であり、その作風から平安時代初期に造立されたと考えられています。榧の一材から彫り出された一木造の仏像で、内刳はなく、衲衣に施された翻波式衣文と左胸の渦文、右肩の茶杓文など随所に古様を表します。
像高は86.8cmとそれほど大きくありませんが、平安古仏特有の分厚さと重量感によって実際の大きさ以上の存在感を発します。写真ではうまく伝わらないかと思いますが、実際に拝すると森厳な霊威が感じられる仏さまです。当日は像の背後に鏡が設置されており、背面までよく見ることができました。
- 十一面観音立像
木造(檜)彩色、寄木造、像高約30cm、江戸時代初期、市指定文化財
十一面観音は薬師如来の右側にある厨子に納められており、もとは遮那院のご本尊でした。右手は与願印を結び、左手には水瓶を持ち、小さいながら美しい仏さまです。
外陣に掲げられた書状は、金華山の麓にて開催された躍進日本大博覧会に十一面観音を出展したことに対して感謝の意を表したものです。
まとめ
可愛らしいご本尊と霊威が感じられる平安時代初期作の薬師如来がお祀りされている慈応寺。普段は拝観することができませんが、次回の公開日は6月8日(土)となっていますので、ご興味のある方は是非この機会にお詣りしてみてはいかがでしょうか。
公共交通機関をご利用の場合は、「大垣駅」から名阪近鉄バス「十六町」行きまたは「稲葉団地」行きで「長松」下車、徒歩5分ほどです。お車でお越しの場合は、門前にある駐車場をご利用ください。
基本情報
- 正式名称
金梁山慈応寺 - 所在地
岐阜県大垣市長松町820 - 宗派
真言宗智山派 - 文化財指定
県指定文化財(木造薬師如来坐像)
市指定文化財(木造十一面観音菩薩立像) - アクセス
JR東海道線「大垣駅」から名阪近鉄バス荒崎線「十六町行き」または稲葉線「稲葉団地行き」で「長松」下車、徒歩約5分 - 駐車場
境内向かいにあり/約10台/無料 - 拝観時間
特別公開時のみ - 拝観料
500円(高校生以下無料) - 御朱印
可/本堂にて(特別公開時のみ) - 所要時間
約10分