本記事では、四ヶ院の塔頭について詳しくご紹介します!
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奈良県葛城市、二上山の東麓に位置する當たい麻ま寺でら。日本で唯一東西双塔が揃って現存する寺院であり、當麻曼荼羅信仰と中ちゅう将じょう姫ひめ伝説が有名です。當麻寺はこんなところ推古天皇二十(612[…]
本記事では、伽藍三堂と東塔・西塔、當麻曼荼羅について詳しくご紹介します!基本情報や見どころをまとめた前回の記事はこちら。[sitecard subtitle=前回の記事 url=https://www.maskt[…]
中之坊と香藕園
當麻寺には平安時代に四十余坊、江戸時代にも三十一房の僧房があったといわれますが、中之坊はそれらの住房の筆頭であり、山内で最古の寺院です。
剃髪堂はその名の通り中将姫が剃髪されたと伝わるお堂であり、「導き観音」と呼ばれる十一面観音がご本尊としてお祀りされています。
普段は堂外からの拝観となりますが、毎月16日の「導き観音祈願会」では堂内で拝観することが可能です。
稲荷社はかつてこの地域で隆盛を誇った古代豪族葛城氏が信奉していた豊受大神を主祭神とします。
東塔を借景にした「香藕園」は桃山時代に作庭され、江戸時代初期の後西天皇の行幸に際して、片桐石州によって現在の姿へと改修されました。それほど広い庭園ではありませんが、内庭と外庭を区切る土塀を低く作ることで、奥行きをもたせる工夫がなされています。
片桐石州:四代将軍徳川家綱の茶道指南役を務めた人物
香藕園は慈光院庭園(奈良県大和郡山市)と竹林院の郡芳園(奈良県吉野町)とともに大和三名園に数えられる名園ですが、池の水漏れや土塀のひび割れなどで2024年度から6ヶ年の大規模修理に入ります。
中之坊には重要文化財に指定された二棟の建造物、書院と丸窓石という茶室があり、四年に一度内部が公開されます。
霊宝館では中将姫関連の宝物を中心に、白鳳・天平の遺物から近代美術に至るまで幅広い宝物が展示されています。展示は入れ替え制で、特別展も定期的に行われています。
中将姫が住まいとした護念院
護念院は尼となった中将姫がお住まいになったお寺として古くから信仰を集め、中将姫が極楽往生を遂げた様を再現する「聖衆来迎練供養会式」で使用される菩薩面や護念院へ寄進された菩薩装束や菩薩持物、菩薩輪光等を管理しています。
本堂にはご本尊の阿弥陀如来立像がお祀りされ、その印相は真正極楽寺(京都府京都市)の阿弥陀如来に通じます。
枯山水庭園の北庭、池泉回遊式庭園の西庭、東西両塔を借景とし約千株のぼたんや大つつじ群、樹齢三百余年以上とされるしだれ桜など四季折々の表情を楽しむことができる双塔園(南庭)と護念院には3つの庭園があります。
四季折々の花が彩る西南院
西南院は當麻寺の裏鬼門(南西)を守護することを目的として建立され、西塔の別当となりました。弘仁十四(823)年に弘法大師が西南院に滞在して以降は真言宗のお寺として現在に至ります。
現在は関西花の寺第21番として、石楠花や牡丹、紅葉など季節によって様々な花をお楽しみいただけます。
本堂にはご本尊の十一面観音菩薩とその両脇侍である聖観音菩薩と千手観音菩薩がお祀りされています。普段は堂外からの拝観となりますが、例年11月の一定期間特別開帳が実施されます。
三観音はいずれも弘仁時代~藤原時代の作で重要文化財に指定されており、なかでも千手観音菩薩は実際に千の手を備えた真数千手観音の現存例として貴重です。
西塔を借景とした庭園は香藕園に勝るとも劣らない名園であり、江戸時代初期に作庭され、同時代中期に一音法印によって改修されました。
西南院の庭園は池泉と石積を中心とした池泉回遊式庭園であり、滝石組も取り入れられています。
庫裏には美しい庭園を正面から眺めつつ、お抹茶をお楽しみいただけるお茶席が設けられています。今回は時間がなくお茶を頂くことができませんでしたので、次回お詣りしたときにはお茶席から庭園を鑑賞してみようと思います。
庭園には水琴窟も備えられ、静謐な境内に独特の音色が響きわたります。
境内の西側の「みはらし台」からは庭園と東西双塔が一望でき、筆者もお気に入りのスポットです。
知恩院と対をなす奥院
奥院は當麻寺最大の塔頭であり、応安三(1370)年に浄土宗総本山知恩院(京都市東山区)第十二世の誓阿普観が往生院を創建したことに始まります。
当時の京都は南北朝分裂の影響によって常に戦火の危険性を孕んでおり、誓阿普観上人は後光厳天皇の勅許を得て、知恩院のご本尊として安置されていた法然上人像や撰択本願念仏集、そのほか法然上人所縁の宝物とともに當麻寺へと遷座したのです。
奥院の正面には一間一戸、本瓦葺、入母屋造の朱色の鐘楼門が立ちます。江戸時代前期に建立された貴重な鐘楼門として現在は重要文化財に指定されています。
奥院の中心となるのが御影堂(本堂)であり、知恩院から移坐された円光大師法然上人像や宝冠阿弥陀如来がお祀りされています。
御影堂は桁行七間・梁間六間、本瓦葺、寄棟造の建物で、江戸時代初期に建立されました。宮殿内に安置されるご本尊の法然上人像は秘仏であり、2月24日の御忌大法要のときにのみ開帳されます。
- 法然上人坐像
木造彩色・玉眼、寄木造、像高75.8cm、鎌倉時代、重要文化財
『當麻曼荼羅疏』巻第四十六には本像が知恩院から遷座されたことが記され、光背柄の慶応三(1867)年修理銘によれば応安元(1368)年の遷座とします。胸前で数珠を爪繰る姿、丸みのある瞼や厚い唇など本像に表される特徴は二尊院(京都市右京区)や金戒光明寺(京都市左京区)に伝わる法然の画像と一致しますが、法然の肖像が一般に老齢の姿なのに対し、本像は比較的若い容姿を表します。
大方丈は棟札から慶長十七(1612)年の建立であることがわかり、御影堂・鐘楼門と同様に重要文化財に指定されています。大方丈は桁行六間・梁間五間半、本瓦葺、寄棟造の建物で、12畳敷の間が上・中・下の三間、6畳敷の間が同じく三間あります。
明治期までは六間全ての襖が金碧画で仕上げられており、大方丈は「金の間」と呼ばれていましたが、明治の廃仏毀釈から太平洋戦争の混乱期に散逸してしまったそうです。
現在は大方丈のみが残りますが、明治大正期までは奥院に二棟の方丈があったことから、それぞれ「大方丈」と「小方丈」と呼ばれていました。
浄土庭園には最深部に鎮座する阿弥陀如来を中心に仏をあらわした石がたくさん並び、二上山を借景とする美しい景観をお楽しみいただけます。
また、奥院に併設されている宝物館では當麻曼陀羅(延宝本)をはじめとする多数の宝物を拝観することができますので、奥院へお詣りの際にはぜひ宝物館にもお立ち寄りください。
まとめ:あじさい以外にも魅力がたくさん
當麻寺の中心となる三堂伽藍に東西両塔をはじめとする貴重な建造物、當麻曼荼羅や弥勒菩薩、講堂の諸像といった仏教美術品、それぞれ異なる表情を見せる四ヶ院の塔頭の庭園など見所が多く、様々な楽しみ方ができる當麻寺。
奈良観光の中心となる奈良市街地や法隆寺が位置する斑鳩エリアからは少し距離があるものの、天王寺(阿部野橋)からは近鉄電車で約45分とアクセスも悪くなくぜひ一度お詣りいただきたいお寺です。
参考
中之坊発行のパンフレット・冊子
奈良国立博物館. 2022.『特別展 中将姫と當麻曼荼羅 展覧会図録』奈良国立博物館
東京国立博物館. 2024. 『特別展 法然と極楽浄土 展覧会図録』東京国立博物館
當麻寺中之坊ホームページ 最終アクセス2024年6月9日
當麻寺護念院ホームページ 最終アクセス2024年6月9日
當麻寺西南院ホームページ 最終アクセス2024年6月9日
當麻寺奥院ホームページ 最終アクセス2024年6月9日