奈良県大和郡山市、矢田丘陵の東麓に位置する矢田寺。
あじさいが彩る境内にはご本尊の地蔵菩薩や天平時代に遡ると推定される十一面観音がお祀りされています。
矢田寺はこんなところ
670年頃に壬申の乱の戦勝祈願のため大海人皇子がここ矢田山に登り、即位後の勅願により智通僧正を開基として創建されたと伝わります。当初のご本尊は十一面観音でしたが、平安時代に地蔵信仰が隆盛に伴い、当寺のご本尊も地蔵菩薩へと移り変わりました。また、創建当時は七堂伽藍四十八ヶ坊が立ち並んでいたようです。
(お寺発行のパンフレットより)
一般的な呼称である矢田寺というのは通称であり、正式名称は「矢田山金剛山寺」といいます。櫛玉饒速日命が天乃羽羽矢を放ち、その矢が落ちたことからこの辺りの地名を「矢田」といい、そこから矢田寺と呼ばれることになりました。
矢田寺は山裾に田園地帯が広がる矢田丘陵の東麓に所在し、境内には本堂や4つの塔頭、春日神社をはじめとする多数のお堂が立ち並びます。普段は参拝客が多いお寺ではなくゆっくりとお詣りできますが、あじさいの季節には大変多くの参拝客でにぎわいます。
みどころ
色とりどりの見事なあじさい
矢田寺ではあじさい庭園が6月1日~7月10日に開園され、60種・10,000株にも及ぶ色とりどりのあじさいを楽しみいただけます。あじさい庭園の開園期間があじさいの見頃ではありますが、矢田寺には多種多様なあじさいが植えられているため5月中旬~9月上旬と約4ヶ月間にもわたってあじさいの花を見ることができます。
様々なあじさいを鑑賞することができるあじさい庭園ですが、道が細いため混雑時は譲り合ってご覧になってください。
あじさい見本園には一つ一つの紫陽花に立札が立てられており、それぞれのあじさいの名称を知ることができます。まずは見本園を見学してから、あじさい庭園を散策されるのがおすすめです!
あじさい祭り期間中は塔頭の一つである念仏院が直近の開花情報をInstagramにて投稿されていますので、お詣りにいく予定の方はチェックしておくとよいかもしれません。
「矢田型地蔵」と天平時代作の十一面観音
本堂にはご本尊の地蔵菩薩をはじめとして多数の仏像が安置されています。普段は外陣までしか立ち入ることができませんが、六月中に限り内陣の拝観が可能です。
- 地蔵菩薩立像
木造(桐)彩色、一木造、像高161.9cm、平安時代前期
ご本尊の地蔵菩薩は左手に宝珠を持ち、右手は胸の前で掌をこちらに向きにして親指と人差し指で丸をつくる印相(OKマークのようなかたち)を結びます。一般的な地蔵菩薩は右手に錫杖を持ち、左手に宝珠を持ちますが、本像のような印相を結ぶ地蔵菩薩を「矢田型地蔵」と呼びます。
- 十一面観音立像
木造(桐)漆箔、一木造、像高216.7cm、奈良時代
地蔵菩薩の右手にお祀りされている十一面観音は創建当初のご本尊と考えられており、木彫の仏像としては非常に珍しい奈良時代に遡る作例だと考えられています。頭髪や条帛の一部が乾漆で造られるなど全体の作風からも天平時代の特徴を感じ取ることができます。全体的にほっそりとしており、可愛らしく、少し女性らしさを感じさせる魅力的な仏さまです。
4匹の可愛い猫
矢田寺の魅力の一つが可愛い猫の存在です。参拝客を気に留めることなく散歩したり、昼寝をしたりと思い思いに過ごしています。
父親のウルルと母親のアンジュ、その子どものダイフクとアン太と計4匹の猫が塔頭の一つである北僧房で暮らしています。
まとめ
あじさいの名所として有名な矢田寺ですが、お詣りの際はあじさいだけではなく貴重な文化財や可愛い猫にも注目してみてください。
公共交通機関でお越しの場合は、「近鉄郡山駅」または「JR大和小泉駅」から奈良交通バスをご利用ください。最寄りのバス停は「矢田寺前」ですが、近鉄郡山駅と矢田寺前を結ぶバスは一日3本のみと大変少なくなっています。こちらのバスがご利用になれない場合は、大和郡山駅とJR奈良駅と大和小泉駅を結ぶバスにご乗車のうえ、「横山口」で下車、徒歩20分ほどです。
お車でお越しの場合は、参道沿いの駐車場をご利用ください。全部で500台ほど駐車できますが、あじさいの季節には満車になることもあり、また周辺の道路は大変混雑します。
次の記事では、境内や仏像について詳しく紹介します。
本記事では、境内と所蔵する文化財について詳しくご紹介します!基本情報や見どころをまとめた前回の記事はこちら。[sitecard subtitle=前回の記事 url=https://www.masktomoe23[…]
また、周辺はハイキングコースが整備されていますので、近隣の松尾寺や東明寺を併せてお詣りされるのもおすすめです!松尾寺は南へ徒歩40分ほど、東明寺は北へ徒歩25分ほどです。
奈良県大和郡山市、矢田丘陵山中に位置する東明寺。森の中にひっそりと佇む本堂には、古様で力強い一木造の薬師如来がお祀りされています。東明寺はこんなところ寺伝によると、東明寺は『日本書紀』の撰者として名高い[…]
奈良県大和郡山市、矢田丘陵の中腹に位置する松尾寺。日々多くの参拝客が御祈祷に訪れる日本最古の厄除け霊場であり、元来の武神の姿をした大黒天や日本唯一の舎人親王像がお祀りされています。松尾寺はこんなところ[…]
基本情報
- 正式名称
矢田山金剛山寺 - 所在地
奈良県大和郡山市矢田町3549 - 宗派
高野山真言宗 - アクセス
- 近鉄橿原線「郡山駅」から奈良交通20系統「矢田寺前行き」で終点下車、徒歩約10分(本数が少ないのでご注意ください)
- 近鉄橿原線「郡山駅」から奈良交通71・72系統「大和小泉駅東口行き」で「横山口」下車、1.5km/徒歩約20分
- JR関西本線「大和小泉駅」から奈良交通71・72系統「近鉄郡山行き」で「横山口」下車、1.5km/徒歩約20分
- 駐車場
参道沿いにあり/約500台/100円~500円(お寺から遠くなるほど料金は安くなります) - 拝観時間
境内自由
本堂拝観 9時30分~ 16時30分(6月中のみ) - 入山料
入山料
(通常)入山料
(6月上旬~7月上旬)本堂拝観料 大人 無料 700円 500円 小学生 無料 300円 500円 - 御朱印
可/本堂と塔頭ごとに頂けます - 所要時間
約30分/あじさい園を見る場合は+約30分/へんろ道を散策する場合は+約90分
参考
お寺発行のパンフレット
猫びよりプラス 最終アクセス2024年5月20日